(1)
夏空妄想 :
作詞/詩街 :
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7月の最後の日
理由もなく街を歩いた
そこら中工事中で
蝉の声が掻き消されていく
アスファルトの道路は
フェンスに囲まれ息苦しそう
腕時計は感情もなく
12時過ぎをさしている
影はやたら短くて、やたら色濃くて、
世界が萎んでしまったみたいで、空を見上げた
今年初めて見た夏空だ
白と灰色の入道雲が緊張感をみなぎらせて舞い、
澄んだ水色の土台空がその踊りを支えている
本当は灰色の鉄塔は
垣間の光を背にして黒に染まってただ聳え立ち、
僕に「さぁ、お前も立ち上がれ」と誇らしげに笑っていて、
僕は思わず右手で敬礼をした
それを合図に、二羽の小鳥が、
鉄塔をくぐって、知らない所へ飛んでった
まるで、祝福しているようで、
疲労も倦怠も、どこか遠くにふっ飛んでった
瞬間、黒い何かが頬を掠めて、
後ろを振り返った
フェンスに股がる細い電柱にある、電灯の上。
鴉だ。
彼は、二回、濁った声で哭いて、去っていった
「日常は物語じゃねえんだ、下らねえこと考えるな」
7月の最後の日
理由もなく街を歩いた