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鬼楽座、開演ノ口上 :
作詞・作曲/無楽 :
629_108-109
作詞俺俺 作曲だれか ついと飛びたる赤とんぼ
走り追い駆け迷い込む 人ならざるの輪の中に
酒も肴も並べられ 秋の夜長を持て余す
魑魅魍魎の宴には 飲めや詠えが常と聞く
音を楽をと騒ぎたて 迫り牙むくもののけに
笛や太鼓を携えて 進みでたるは名も無い貴方
誰が言の葉つむいでは 珠玉の音をまとわせて
神も堕ちゆく歌声に 鬼も哭いては酔いしれる
宴もたけなわ左を見れば 見目麗しき鬼がいる
右を見るなら声通る 音に興ずる鬼がいる
一人よりも双篭(ふたごもり) 二人よりも三構(みつがまえ)
無楽奈落のこの世にて 誰を想いて哭くよりも
数千蓮華の中に座し 徒党を組んで舞い踊れ
鳥獣草木に至るまで これ即ち大喝采
逢魔が時の暗がりで 鬼が楽しむ音がする
袖を引かれて気を引かれ 抜き足 差し足 忍び足
覗き込んだら逃げれない 魅せて魅せられ逃げれない
この喜びを この衝動を なんと表そう
そうだ これを
今 鬼楽と号すなり