(1)
おぼろどうふ :
作詞/ゐそ :
915_231
空から降る雨を避けずに 受け止める人たち
嬉しげな顔をして 空に向けて両手を伸ばしていた
一人一人溶けて行ったから ダンスホールはがらんどう
輝く雨漏りの跡 避けて傘を差す僕は一人きり
空が泣いた 皆が呼んでいる そろそろ行こうか いやここで待とう
彼らが誘う 先に行こうと誘う もう諦めようか でももう少し
傘を回して一人踊った 伸ばした腕が枯れてゆくけど
一人きりのダンスホールは 馬鹿な僕を笑う 僕も笑う
扉の先は暖かな籠 撫でてゆく穏やかな手
哀しげな顔をして こちらに向けて両腕を伸ばしてる
君がいないから僕は待つよ 彼と僕の時は離れて
輝く思い出の痕 想い傘を回す僕は消えてゆく
雲が囁く もういいだろうと まだまだ待てるよ 時間はないけど
煙が誘う もう時間だよと 黒く霞んでゆく 君はいないまま
傘を落として一人転んだ 伸ばした足は動かなくなった
一人きりのダンスホールに 君はもうこない もう来ない
赤く染まる 黒く煤ける 迷子の僕と君はぐれて
もういないよ どこにもいないんだよ このまま風に溶けてゆく
明日を知らない 昨日も知らない 「さようなら」も「会えて良かった」も
全部忘れて 今日に溶ける このまま風に溶けてゆく
空から降る雨が止む 開いた目に映る笑顔
錆びたダンスホールには もう誰もいない